機関紙建設なんぶ

機関紙建設なんぶ2013年11月10日号

伊豆大島で土石流被害
最優先の捜索と同時に住宅確保が課題

台風26号による豪雨で、伊豆大島(東京都大島町)では、死者35人・行方不明者4人(11月9日現在)等の被害が発生しました。被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。
 港支部は都心三区(港・千代田・中央)と島しょ(伊豆大島、新島村等)を担当しており、大島町在住の組合員30人(発災当時)の安否が心配されましたが、組合員に直接の被害はありませんでした。しかし、家のそばまで土砂が押し寄せたり、親族を探している組合員がいます
 支部は、当面の対応として、本部が現地に派遣した「先遣隊(せんけんたい)」に参加しました。

 

●家屋が押し流された現場を視察

土砂で押しつぶされた神達地域の家(11月3日撮影)

土砂で押しつぶされた神達地域の家(11月3日撮影)

建設技術・技能者集団として、東京土建が今後どんな役割を担(にな)えるかどうかを検討するための先遣隊が11月3日(日)に現地入りし、大島町に支援金を届けるとともに、被災現場を視察しました。
 先遣隊には、東京土建本部の人見中央執行委員長・白滝書記長・徳森常任中央執行委員・鈴木副主任、東京地方労働組合評議会の伊藤議長・中野前国民運動局長、全建総連東京都連合会(東京都連)の長谷部書記次長、一般社団法人全国木造建設事業協会(全木協)東京都協会の鈴木副会長(東京土建江戸川支部所属)、港支部の瀬田大島分会長・内田前大島分会長・小川支部書記次長が参加しました。
 11月3日の午前には、川島理史大島町長を訪問し、まず、本部をはじめとする各団体から大島町への支援金を町長に手渡し、港支部からの支援金5万円は、内田前分会長が川島町長に手渡しました。
 川島町長からは、支援へのお礼と現状の報告がなされ、組合に対する、復興に向けたボランティア派遣と被災者向け住宅の建設への期待が表明されました。
 町長との懇談の後に取り組んだ現地視察では、被災現場の一番右側にあたる「火山博物館」の脇(普段は柵で閉鎖されている)から三原山に通じる「御神火(ごじんか)スカイライン」沿いの八重沢堆積場(たいせきじょう)を視察しました。
 流木と土石流が、家屋・自動車・樹木など、あらゆる物を押し流し、数十メートル押し流された住宅や崩壊をまぬがれている全壊状態の家屋があるなど、悲惨な現場で、東京消防庁のレスキューが重機を使用してガレキ撤去を行っていました。また、山肌の地滑りによる作業員への二次被害を予防するために、消防庁職員が所々に立って、三原山を見張っている姿が目に付きました。「御神火スカイライン」は途中で寸断され、地元の建設業者が次の崩壊を防ぐための流木の撤去と火山灰の撤去を進めていました。
 本部ほかの団体は3日の内に帰りましたが、翌日の4日には、内田前分会長と井坂大島分会書記長、小川書記次長の3人で、今回の被災現場の最上部で一番左側に位置する長沢堆積場を視察しました。被害の大きかった元町神達(もとまちかんだち)地域と元町3丁目地域は、八重沢と長沢の中間にあり、その間に土砂を受け止める谷がなかったことから、2つの沢からあふれた流木と土砂が住宅を押し流し、被害を大きくした、と見られています。
 また、ボランティアの窓口となっている大島社会福祉協議会を訪問し、ボランティアの進行状況を教えていただきました。「火山灰は、水分を含むとヘドロのようにドロドロになりますが、乾くとアスファルトのように硬くなるため、高齢者の多い大島町では床下等に入った泥を撤去するのに苦労している。元町2丁目(海に近い方)の住宅や店舗の泥の撤去支援を11月末には終わらせ、12月からは元町3丁目(山に近い方)と神達地域での泥の撤去支援を進めたい」とのことでした。
 行方不明者捜索や復旧作業で忙しい中、時間を作ってくれた山田建設梶i大島建設業協会の会長企業)の清水社長は、「地元建設業協会としても地元の復興に最善を尽くしたい。協会会員の中には戸建住宅を建設する事業所が少ないため、仮設住宅建設にあたって求められる地元建設業者の役割について役員と相談したい」と話してくれました。

 

●最優先の不明者捜索と同時に、住宅建設が課題

内田前分会長が町長に支援金を手渡す(右から川島町長、内田前大島分会長、小川支部書記次長、瀬田大島分会長)

内田前分会長が町長に支援金を手渡す(右から川島町長、内田前大島分会長、小川支部書記次長、瀬田大島分会長)

自宅が損壊し、町施設に避難していた避難者(17世帯)が11月2日に、都教職員住宅の空き部屋に入居しましたが、入居期限は来年3月末までとなっています。また、町では100を超える建物が全半壊などの被害を受けており、親類の家などに身を寄せている人が多くいます。引き続き行方不明者の捜索が最優先されるべきですが、同時に、住宅の確保が課題となっており、仮設住宅や本格的な「復興住宅」の建設が急がれます。
 また、家や店舗等の床下に入った泥の撤去については、床板をはがしながら進めているため、撤去後の消毒や床板の張替え、畳替え、内装工事等が必要になります。
 今回の被害で、観光などの地域経済への打撃が見込まれています。地域経済の復興という点からも、復旧・復興工事(住宅建設や土木工事)にあたっては、「内地」の大手業者ではなく、地元建設業者を優先することが求められますが、現地だけでは職人や資材の手当ができません。私たち建設労働組合には、住宅建設等への労働者供給で応えることが求められており、その具体化を進めていく必要があります。